映画

楢山節考

うば捨て山の民間伝承をもとにした異才・深沢七郎の衝撃的な同名小説を、木下惠介監督が歌舞伎の様式美を大胆に取り入れ、ほぼ全編舞台セットで映画化した野心的傑作。

選考委員の三島由紀夫を心底驚嘆させて第1回中央公論新人賞を受賞し、一躍その異才ぶりを世間に知らしめた深沢七郎の小説「楢山節考」。この原作を、木下監督が絢爛たる手法とアイデアを駆使して大胆に映画化。後年、今村昌平監督が土着的なリアリズムを用いて再映画化したのとは対照的に、木下監督は、ほぼ全編舞台セットを用いて、歌舞伎や演劇的な意匠を数多く取り入れ、音楽には長唄や浄瑠璃を使用するなど、徹底した様式美を施し、けれん味あふれる独自の世界を作り上げた。田中絹代の鬼気迫る熱演も必見。