映画『のぼうの城』で独特の存在感を魅せた狂言師・野村萬斎。600年の歴史を持つ「狂言」を現在に伝える。NYグッゲンハイム美術館での「三番叟」公演を追う。
映画『のぼうの城』で独特の存在感を示した狂言師・野村萬斎。また、世田谷パブリックシアターの芸術監督として舞台演出を行なうなど、ひとくくりにできない領域での活発な動きが見られる。さまざまな営みも、狂言の魅力を「今」に伝えるというひとつの道に通じている。狂言は室町時代に生まれた伝統芸能であり、現代に伝わったものだが、観客を楽しませるためには、相当な工夫・努力が必要だと萬斎は考えている。伝統であることに安住し、「今」の新鮮な空気を吸収しなければ、単なる博物館の展示物になってしまう。
そんな危機感を持つ萬斎は、さまざまな活動から得た現代の観客と共有できる感覚を伝統芸能である狂言作品に注ぎ込む。現在を生きる狂言”の真髄に迫り、現代の観客にも十分に面白さを伝えること。現代的でありかつ狂言的であることを求めて、萬斎は現代美術の聖地であるNYグッゲンハイム美術館で、「三番叟」を「踏む」。