武者小路実篤の名作が、新たなアプローチでよみがえる。戦争で視力を失った兄と、彼を献身的に支える妹。苦しい境遇の中で試される「人間本来の価値」を問う感動作。
「白樺派」の中心人物として知られる文豪・武者小路実篤が、1915年に書き上げた戯曲「その妹」。自由で民主的な時代の空気を象徴する、素直な話し言葉で書かれたこの作品は、一方で、資本主義による“金権”社会や、戦争の重圧に苦しむ当時の人々を描き出し話題になった。厳しい現実の中、互いのことを思いやり、もがきながら生きる兄妹の物語だ。<ストーリー>明治時代末期。画家として将来を嘱望されていながら、戦争で視力を失った野村(市川亀治郎、現:市川猿之助)は、美しい妹の静子(蒼井優)とともに叔父夫婦の家に身を寄せていた。絶望となんとか折り合いをつけながら作家になる道を探る野村を、静子は筆記を手伝いながら献身的に支えて暮らす。そんな中、静子は叔父夫妻から意に沿わぬ縁談を迫られ、兄妹は苦境に陥る。
状況を知った野村の友人で編集者の西島(段田安則)は、野村と静子を支援することを決意。叔父夫妻のもとを離れた2人の生活費を、身を削って工面する。西島が友情を越えた感情を持ちつつあることを、妻の芳子(秋山菜津子)は敏感に感じ取っていた。試練が続く中、自らを奮い立たせながらも、現実に押しつぶされそうになる野村。そのかたわらで、静子はある思いを胸に秘めていた…。
演目
- シス・カンパニー公演「その妹」
出演
-
市川猿之助
-
蒼井優
-
秋山菜津子
-
鈴木浩介
-
水野あや
-
内田亜希子
-
西尾まり
-
段田安則
スタッフ
-
作武者小路実篤
-
演出河原雅彦