食と芸術に彩られた“ベネルクス三国”を巡る極上の鉄道旅。
オランダ&ベルギー
今回は、美しい中世の街が守られ、独自の歴史と文化が息づくベネルクス三国を訪れます。レンブラントやフェルメールを輩出した芸術のオランダへ、そしてビールやチョコレート、ジビエなど美食満載のベルギーからルクセンブルクへ。市民に親しまれるインターシティや、2010年にリニューアルされた国際高速列車タリスで駆け抜けます。
食と芸術に彩られた“ベネルクス三国”を巡る極上の鉄道旅。 オランダ&ベルギー今回は、美しい中世の街が守られ、独自の歴史と文化が息づくベネルクス三国を訪れます。レンブラントやフェルメールを輩出した芸術のオランダへ、そしてビールやチョコレート、ジビエなど美食満載のベルギーからルクセンブルクへ。市民に親しまれるインターシティや、2010年にリニューアルされた国際高速列車タリスで駆け抜けます。 ムガール帝国の盛衰を見つめて デリー〜アーグラー〜ファテープル・スィークリー〜ジャンスィーアムステルダム 17世紀に繁栄を誇った世界一の港町ダム広場アムスの心臓、アムスのへそなどと呼ばれている、街の歴史が始まった場所。かつてここには、アムステル川をせき止めるダムがあり、それが街の名の語源となりました。川の両岸が結ばれることによって人が集まり、商業が栄え、街が発展していったそうです。東側の白い塔は第二次大戦の戦没者慰霊塔。西側には現在は迎賓館となった王宮がありますが、取材時は改装中でした。 ダム広場 アムステルダム市営トラム旧市街は道路が狭く車が使いにくいため、トラムが自転車と並ぶ市民の足となっています。目印は白とブルーのツートンカラー。1875年に馬車トラムとして開業し、今でもヨーロッパ有数の交通網を誇ります。現在16系統が運行されており、そのうち8系統の歴史は19世紀にまでさかのぼるとか。クラクションが鐘の音というのも、耳に心地よく旅情をそそります。 街中を走るトラム トラム側面 アムステルダム国立ミュージアム純粋にミュージアムとして使うために造られたヨーロッパ初の建物で、1885年開館。オランダ最大、かつ、その建築の美しさも群を抜くミュージアムです。ハイライトはもちろん、17世紀オランダ黄金時代の絵画。『夜警』などレンブラントの20作品と、『牛乳を注ぐ女』などフェルメールの4作品は、何時間でも見ていたいほど。近所にはゴッホ美術館、近代美術館もあり、アートファンは見逃せません。 アムステルダム国立ミュージアム フェルメール『牛乳を注ぐ女』 レンブラント『織物商組合の見本調査官たち』 レンブラントの家レンブラントが1639年から20年間住んでいた家で、内部を当時のままに再現し、博物館として公開しています。油彩画が有名なレンブラントですが、その名声を国外にまで知らしめたのはエッチング(版画)。この家には数多くのエッチング作品も展示されており、その印刷プロセスも知ることができます。 レンブラントの家 外観 レンブラントのアトリエ 版画作品をあしらった看板 アムステルダム中央駅赤レンガが印象的な中央駅は1889年に完成。東京駅のモデルという説もあります。アイ湾を埋め立てた人工島に建設されており、北側はすぐ港に面し、南側は駅前広場を挟んで3本の橋で市街地とつながっています。2つの塔の右側には時計、そして左側に風向計が付いているのは風の国オランダならでは。今回の旅は中央駅から、主要都市を結ぶ列車「インターシティ」に乗車します。 アムステルダム中央駅 アイ湾の人工島に建つ駅舎 ライデン シーボルトゆかりの学術都市インターシティ国内主要都市を結ぶ、いわば急行列車。日本の特急に該当しますが、座席指定は必要ありません。とはいえ混雑で座れないことはまずなく、時間も正確なのが日本人にも嬉しいところ。オランダらしく自転車を持ち込むことができますが、その場合は自転車用切符も必要です。国のカラーであるオレンジをモチーフとした内装やゆったりとした座席で、オランダの旅を心地よく効率的に楽しめます。 インターシティ オレンジ色の車内 車内の自転車スペース ライデン大学オランダ最古の大学で1575年創設。日本学科があり、我が国ともゆかりが深い大学です。幕末の長崎に医師として赴任したシーボルトもここで学びました。植物園には彼が持ち帰ったイチョウ、カエデなど日本の植物が植えられ、日本庭園にはシーボルト像が。彼が愛妻「お滝さん」にちなんで名付けた「オタクサ(アジサイ)」も可憐な花を咲かせています。 ライデン大学校舎 ライデン大学 日本庭園 シーボルトが愛した『オタクサ』 シーボルトハウス1823年に長崎・出島の商館医としてに日本に派遣されたシーボルト。彼が収集した2万点余りの品物を収蔵しています。展示品は美術工芸品から動植物の学術資料、日用品にいたるまで幅広く、当時の日本の生活を知る上でも貴重なコレクションです。日本語の説明も付いていて、こじんまりした施設ながら見ごたえは十分。 シーボルト像 江戸時代の美術品 デン・ハーグ 官公庁が集まるオランダ政治の中心地ビネンホフ国会議事堂、外務省、女王の執務室があるノールダインデ宮殿など、13〜17世紀の歴史的建造物が集まっているビネンホフ。かつてのお堀の一部、ホフフェイファの池越しに眺める景色は、思わずうっとりする美しさです。マウリッツハイス美術館には、フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」が収蔵されています。 ビネンホフとホフフェイファの池 マウリッツハイス美術館 左端の塔がオランダ首相執務室 騎士の館(国会議事堂)ビネンホフで最も古く、「騎士の館」と呼ばれているのが国会議事堂。2本の尖塔を持つ重厚なレンガ造りで、一見すると由緒ある教会のようです。9月の第3火曜日にはこの広場で国会の開会式が行われ、8頭立ての馬車に乗った女王と衛兵のパレードを見るために多くの観光客が訪れます。 騎士の館 デルフト 「デルフト・ブルー」の陶器の町市庁舎赤い窓枠と青い屋根が印象的な市庁舎は、17世紀に建てられたもの。塔部分のみ、火事で焼け残った古い市庁舎(14世紀建造)のものを再利用しているそう。ファサードが美しいことでも知られ、貴族の邸宅のような建物です。 市庁舎 新教会1381年建造の、ゴシック様式の教会。内部にはオランダ建国の祖・オラニエ公ウィレム1世をはじめとする代々オラニエ一族が葬られています。また、デルフト生まれで国際法の父・グロチウスの墓もあり、ステンドグラスにも彼の姿が描かれています。379段の階段で108m余りもある鐘楼を上ると、デルフトの町はもちろん、遠くロッテルダムまで一望できます。 新教会 ウィレム1世の棺 鐘楼からの眺望 ロイヤル・デルフト(デルフト焼の工房)「デルフト・ブルー」と呼ばれる、白地に青で彩色された美しい陶器。これは、17世紀に東インド会社が輸入した、中国や日本の陶磁器の影響を受けて生まれました。当時は多くの工房が腕を競ってその名を世界に広めましたが、今でも職人の手作業で絵付けをしているのはごくわずか。ロイヤル・デルフトではそんな職人の技や、アンティークの陶器作品を見ることができます。 職人による絵付け作業 レンブラントの『夜警』をタイルで再現 アンティーク作品の数々 ロッテルダム モダンな近代建築が彩る産業都市ユーロマスト第二次大戦で壊滅的な被害を受けたロッテルダム。戦後、市と市民が協力して都市計画を進め、近代建築が印象的なモダンな街に生まれ変わりました。中でも目をひくのが高さ185mのユーロマスト。最上部まで上れるガラス張りのエレベーターも圧巻ですが、地上100m地点に展望レストランと豪華なホテルがあるのが驚きです。 ユーロマスト ユーロマストからの眺望 心臓を失った男の像先の大戦でナチスの大爆撃を受けた、ロッテルダムを象徴する像。胸に穴が空いた男が空を仰ぐ姿は、この街の深い絶望感を表しています。他にもロッテルダムの街には彫像が多く、ロダンやピカソの作品も見ることができます。 心臓を失った男の像 キューブハウスこの街の先進的な雰囲気を生み出している近代建築の中で、最も斬新かつシンボリックなのがキューブハウス。1978〜84年にピエット・プロム設計で建てられました。実際に人が住んでいるマンションですが、1室だけ一般公開もされています。 キューブハウス キンデルダイク 風車群で知られる世界遺産の村風車群ロッテルダムの南東約10km、キンデルダイク郊外には1740年頃に造られた干拓用の風車が19基残っており、オランダの原風景を見ることができます。現在、これだけまとまった数の風車を見られるのはキンデルダイクのみ。中を見学できるのは1基だけ、他は現役で活躍中で、今も風車番が家族とともに暮らしているそうです。1997年世界文化遺産に登録。 キンデルダイクの風車群遠景 内部を公開している1基 マーストリヒト ドイツ、ベルギーと国境を分ける古都聖セルファース教会4世紀の司教、聖セルファースを祀っているカトリック教会。オランダで最も古い教会の1つです。最初はロマネスク様式で建立され、時代を追ってゴシック様式で改修が進められたため、見る角度によって建物の印象が変わるとか。宝物殿では黄金の胸像や聖遺物箱などを公開しており、1050年頃に作られた地下墓地には384年に没した聖セルファースが埋葬されています。 聖セルファース教会 聖セルファースの胸像 聖遺物箱 マルクト広場の露天市市庁舎前の広場には、中世から続く青空市場が立ちます。衣料品、食料品、日用品など、なんでも揃う庶民のマーケットです。マッシュルームの一大生産国・消費国といわれる通り多彩なきのこを売る店があったり、名物のニシンの酢漬けをテイクアウトして頬張る人々も。その賑わいを眺めているのは「モースウィフ像」。典型的なオランダの市場のおばさんを表現しています。 市庁舎と露天市 名物のニシンを売る露店 モースウィフおばさん
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